「プロテイン・アイランド・松山」(Protein Island Matsuyama, PIM:ピム)とは、愛媛大学 遠藤弥重太 特別栄誉教授が開発した「コムギ無細胞タンパク質合成系」を核に、愛媛・松山を世界のタンパク質研究の中心にしていこうという構想を表す言葉で、アメリカの「シリコンバレー」を越えるものになればとの思いが込められています。タンパク質研究・関連産業の一大拠点形成に向けて、5団体が協力して事業を行っています。
PIMとは?
プロテイン・アイランド・松山とは、産学官連携の仕組みです。
愛媛大学・愛媛県・松山市・松山商工会議所・愛媛経済同友会の5者が主催となり、それぞれの得意分野を融合させて活動しています。【PIM組織 紹介ページへ → 】一般の方・研究者・企業関係者といった、対象者別にイベントを開催し、無細胞系の普及やアピールを行っています。ここ数年は、「ビジネス展開への試み」において、企業・アカデミア・行政から研究開発にかかわる人材が集い、産業化へつながる技術の普及やネットワーキングに力を入れています。
ひとつの技術を核にして産学官が連携するPIMのような取り組みは全国的にも珍しく、さらに15年以上継続した関係が保たれているのは、大変貴重な事例といえます。【過去のPIM 紹介ページへ → 】
遠藤特別栄誉教授が開発した「コムギ無細胞タンパク質合成系」は、それほどインパクトのある新技術なのです。
PIMでは、「プロテイン(たんぱく質)」を「はたらく分子」として捉え、その可能性を開いていきます。
この取り組みを象徴するロゴを作成しました。→ 詳細ページへ
PIMの取り組みをまとめた資料を掲載しました。(PDF)
無細胞系とは?
PIMの活動を説明するときに度々登場する「無細胞タンパク質合成系」。
「わかるようで、わからない」という声をいただきます。そんな皆様に向けた、初歩的な解説です。
PIM活動をご理解いただくうえでの一助になれば幸いです。下記の動画も参考にしてください。
*↓下の質問をクリックすると、詳細説明が出てきます。
生物が持っているタンパク質を作る仕組みを、細胞の中から取り出し、試験管の中で安定してタンパク質合成を行えるようにした方法です。
したがって、タンパク質を作る仕組みは、生細胞のものと全く同じです。
合成している場所が、細胞内なのか、試験管の中(細胞外)なのかの違いです。
たったこれだけの違いですが、研究するうえでは大変な突破口となることがあります。
生細胞内でのタンパク質合成やDNA、mRNAについては、中学や高校でも学習しますので、ご存じの方も多いでしょう。
難しかったというイメージを持たれているかもしれません。
下記のリンク集では、気軽に閲覧できる動画を集めてみましたので、参考にしてみてください。
なお、愛媛大学で開発している無細胞系は、「コムギ」を利用したものですが、他にも「大腸菌」、「昆虫細胞」、「ウサギ網状赤血球」などを利用した系がありそれぞれに特徴があります。通常の無細胞系キットは、専門的な知識や設備が必要なので、一般の方は使えませんが、PIM一般向け体験セミナーで使われている「教育キット」は、本セミナーの為に特別に調整しましたので、一般の方や中高生にも扱いやすいものになっています。
1950年代から研究されてきましたが、実用的な技術になったのは、20年程前のことです。
今から70年ほど前、1950年当時は、原理は見出されていましたが、ある程度合成が進んでもすぐに止まってしまい、満足な量のタンパク質が得られませんでした。そのため、タンパク質の合成方法として使われることはありませんでした。
その後、DNAやタンパク質の合成等について、たくさんの事がわかってきたため、実用的な方法として次第に改良が進みました。20年ほど前から、研究の目的に沿った無細胞系(ウサギ、大腸菌、昆虫、コムギ)が多数開発されはじめましたが、まだ実用性に疑いを持つ研究者も多く、無細胞系としても改良が必要でした。そこで、たくさんの研究者に使ってもらって、その実力を示し問題点を改良していくことから始まりました。
15年ほど前に、プロテイン・アイランド・松山も始まり、地域と共に成長していくPIM構想のもとに、活動をはじめました。そのころ、生合成では合成が難しかったタンパク質が、無細胞では合成できる具体例(マラリア関係のタンパク質など)が増え、研究において有効性が認識されはじめました。
現在では、無細胞系はタンパク質研究の効果的な方法として確立され、他の技術と組み合わることで新しい技術革新を起こしています。
無細胞系は研究用のツールです。
従来の方法や他の技術と組み合わせて使うことで、全く新しい研究がはじまったり、これまで難航していた研究が飛躍的に進んだりといった効果が出ています。
現在取り組んでいるのは、新しい薬剤(薬、診断薬、農薬など)の開発です。副作用や環境への悪影響が少ない理想の薬剤を目指して、分子レベルでの緻密な研究が行われています。これは世界的な競争にもさらされている分野ですので、愛媛大学プロテオサイエンスセンターでは、多くの研究機関や企業などと協力して開発を進めています。まだ、一般の方に身近なものとして製品ができているわけではありませんが、研究の成果をお届けできるよう、努力しています。
また、既に株式会社セルフリーサイエンスという、愛媛大学発のベンチャー企業が2002年に設立され、コムギ無細胞タンパク質合成試薬やタンパク質自動合成機の販売、タンパク質合成の受託などの事業を行っています。
リンク集(タンパク質の合成に関する動画)
動画製作者 | リンク先 (別サイトへ移動します) |
概要 |
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驚異の小空間「細胞」 ~大きく発展をとげた生命科学の10年~ | 生命科学の発展を、魅力的な映像とともにドキュメンタリータッチで紹介しています。JST サイエンスチャンネルのサイトへ移動します。(29分) | |
ニコン | ユニバースケール | 動画ではありませんが、模式図で示したタンパク質やDNAなど、実際の大きさを比較しています。とてもおしゃれなサイトです。株式会社ニコンのサイトへ移動します。 |
Wellcome Genome Campus(イギリス・英語) | From DNA to protein - 3D | イギリスのグループが作製しています(英語)すっきりとした模式図でわかりやすさを追求しているようです。(2分41秒)下記の動画、同じような内容ですが、表現の違いに注目です。 |
DNA Learning Center(アメリカ・英語) | mRNA Translation (Advanced) | なるべく実際の状態を表そうとしています。細胞内で物質が常に動いている様子まで表現されています。1分13秒から、タンパク質の合成が始まります。(3分3秒) 。 |
リンク集(専門サイト)
リンク先 | 概要 |
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コムギ無細胞タンパク質合成系を基に様々な研究を行っているセンターです。 愛媛大学プロテオサイエンスセンターのサイトへ移動します。 | |
無細胞生命科学研究会 | いろいろな無細胞系について、簡単な紹介があります。無細胞研究会のサイトへ移動します。。 |