11月9日に開催した、植物ウイルスと農業被害 ~カンキツウイルス検査キットの開発~講演会ですが、たくさんのご質問をいただきました。
講演要旨とともに、Q&A形式で公開いたします。今回ご紹介した企図は、試作品です。愛媛が誇るカンキツを下支えするために、今後も、皆様と協力して改良していきたいと考えていますので、興味がある方は、ぜひご連絡ください。
植物はいろいろな病害虫にさらされているが、「ウイルス病」を疑うポイントがあれば、教えてください。
書籍やインターネット等で検索可能なウイルス病に典型的な病徴が観察される場合を除くと,植物のウイルス病はその他の病虫害との区別が容易ではありません。通常は,肉眼やルーペ,顕微鏡を使って害虫や他の病原体が認められない場合に,ウイルス病,または栄養障害や薬害などを疑い,それらを区別するためにウイルス診断を行うことになります。
今回の検査キットはどのような使い方を想定していますか?
今回皆様に体験いただいた検査キットは試作段階のものですが、最終的には農業現場でのカンキツウイルス検査に利用できればと考えています。
検査キットを使う時の、感染葉の抽出方法を教えてください。(葉は切り刻んでつけるとか、液体は?)
今回用意したサンプルは、乳棒乳鉢を用いて葉をバッファー中ですりつぶしたものですが、農業現場での使用を考えた場合、チューブの中で棒などを使ってすりつぶすことでサンプルを調製する方法にしたいと考えています。
この検査キットでは、ウイルス症状のある葉と症状の無い葉での検出に差がありますか?(例:紅マドンナの春葉に症状が顕著ですが、夏秋梢では症状がみられない場合、春葉と夏秋梢葉で検出差が小実のでしょうか?)
現在、評価中ですが、見た目で症状がない葉でも陽性判定が出る場合があります。今後、PCR検査を同時に行い、どのくらいのウイルス量で陽性になるのかについて確認していきたいと考えています。
この検査キットの有効期限はどれくらいですか?
現在、評価中で、まだデータは得られていません。一般的なイムノクロマト法を利用した検査キットの有効期限は1年〜2年ほどです。私たちのキットも同程度ではないかと考えています。
近縁ウイルスを認識すると、検出精度が下がるような気がするのですが、そんなことは無いのでしょうか?
一般的な考えとしては、検出できるウイルスの種類を増やせば増やすほど反応性が下がることになります。しかし、今回の検査キットに用いた抗体は、カンキツモザイクウイルスを高感度で検出できる抗体を選抜しましたので、カンキツモザイクウイルスに対する検出感度が高い検査キットとなっています。カンキツモザイクウイルスの近縁ウイルスに関しては、カンキツモザイクウイルスよりは検出感度が高くはないと考えています。
弱毒性ウイルスを先に感染させて、抗体を作るということでしょうか?
植物は動物と違い、抗体を作ることは出来ません。しかし、植物はウイルスに対する抵抗性を高めるタンパク質を作り、ウイルスの増殖を抑制したり、ウイルスが植物個体全体に広がらない無い様にすることができます。予め弱毒性ウイルスを感染させておくと、植物のウイルス抵抗性応答が素早く確実に起こるため、非常に有効な手段といえます。ただし、ウイルスを弱毒化することが難しいため、非常に限られたウイルスにのみ利用できる手段となっています。
今回検査キットの開発のために作成した抗体は、カンキツウイルスのカプシドタンパク質の一部分の配列に相当するペプチドをウサギに接種して単離したものになります。
抗体のサイズはどのくらいですか?
約150kDaです。一般的な抗体とほぼ同じ大きさとなっています。
判定のラインがたいへん薄かったが、今後の改良で、濃くなりますか?
今回のキットは試作段階のモノで、実際の現場でどの程度の反応性が得られるかを評価することを目的としていました。得られた結果を元に、今後、抗体の量を上げたり、発色粒子の種類や大きさを変えるなどにより、改良していきたいと考えています。また、今回判定ラインが薄かった理由として、ウイルス量の多い感染葉サンプルを用意できなかったということもあります。
植物ウイルスと農業被害
~カンキツウイルス検査キットの開発~
盛会のうちに終了いたしました。
参加者の皆様もたいへん熱心で、質問も多く寄せられました。
これからも、キットの改良など行っていきたいと思います。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
【開催日時】
2020年11月9日(月) 15:00~17:15
【会場】
テクノプラザ愛媛 1階 テクノホール(松山市久米窪田町337-1)
駐車場有
【内容】
愛媛県果樹研究センターと愛媛大学プロテオサイエンスセンターが開発した、カンキツウイルスを高精度で検出する技術(詳細)をご紹介する講演会を企画しました。
今回は、カンキツ病についての解説と、この技術を直に体験していただける簡単な実験も行いますので、農業関係者のみならず、検査キットの開発や製品化にご興味のある企業様のご来場も、お待ちしております。(講演会プレスリリースPDF)
(講演要旨PDF)
【対象】
愛媛県内の方限定(お住まいや職場が愛媛県内にある方)
【定員】
50人(先着順)
【参加申し込み】
事前申し込みが必要です。先着順で、50人限定の講演会となります。
参加ご希望の方は、お早めにお申し込みください。
申し込みフォーム
申し込みは締め切りました。たくさんのお申し込みありがとうございました。
★事前申し込みされていない方は、参加できませんので、ご了承ください。
★既にお申し込みいただいた方には、受講票をお送りしています。
当日忘れずにお持ちいただき、受付にご提出ください。
会場でお会いできるのを楽しみにしております。
【問合せ先】
E-Mail:pim2020@pim-sympo.jp
電話:
089-912-2483 (愛媛県経済労働部 産業支援局 産業創出課)
089-927-9686 (愛媛大学 プロテオサイエンスセンター)
【感染症対策について】
※当日、体調がすぐれない方はご来場をご遠慮ください。
※新型コロナウイルス感染対策のため、会場ではマスクの着用や手指の消毒等にご協力ください。
※定期的に換気を行いますので、調節できる服装でお越しください。
※新型コロナウイルスの感染状況によっては、ウェブ開催となる場合があります。
(11/9時点の情報:ウェブではなく、会場で開催します。)
膜タンパク質合成方法(動画)企業研究者対象 技術講習会
専門家の方向けに、「膜タンパク質の合成」と「タンパク質間相互作用解析」を動画で解説しています。
PIMの核となる「コムギ無細胞タンパク質合成系」による、「膜タンパク質の合成」は、技術講習会でもたいへんニーズの高い技術ですので、多くの企業研究者・アカデミア研究者の方に興味を持っていただけると思います。
「リポソームの作成」、「膜タンパク質の合成」、「膜タンパク質の確認方法」の3つの内容を解説しています。(30分)
抜粋バージョンでは、「膜タンパク質の合成」だけの紹介になっています。(15分)
更に、「コムギ無細胞タンパク質合成系」とパーキンエルマー社の「アルファ―スクリーン技術」を組み合わせることによって、新しい「タンパク質間相互作用解析」系も確立されていますので、合わせて動画を作成しました。タンパク質研究の突破口にもなり得る技術です。
一般の方々にも、自由に閲覧していただき、大学での研究の様子を垣間見ていただく機会と考えています。
興味を持たれた方は、PIMで開催しているイベントへ、ぜひお越しください。
「第20回日本蛋白質科学会年会」出展【終了】
BioJapan2020への出展【終了】
盛会のうちに終了いたしました。たくさんの皆様にお越しいただきまして、ありがとうございました。
BioJapan2020に出展します!
日時:2020年10月14日(水)~16日(金) 10:00~17:00
会場:パシフィコ横浜 展示ホール
ブース: D-51
内容:PIM事業の紹介、愛媛大学プロテオサイエンスセンターで開発された新しい技術の紹介、株式会社セルフリーサイエンス製品紹介
*新型コロナウイルス感染症の影響から、ブース担当者が変更になる可能性があります。
*マッチングシステムは、リモートでも利用できます。
セミナー:2020年10月14日(水) 15:00~15:30 Stage B
タイトル:⾮変性ヒトプロテインアレイを⽤いた相互作⽤タンパク質同定に関する新技術
担当:株式会社セルフリーサイエンス
愛媛大学遠藤特別栄誉教授が開発した「コムギ無細胞タンパク質合成系」を基に、愛媛大学発ベンチャー企業である株式会社セルフリーサイエンスが、開発した独自技術を紹介します。
企業研究者向け 技術講習会(中止)
今回、予定していた、企業研究者向け技術講習会「膜タンパク質合成講習会」は、新型コロナウイルス感染症蔓延防止の観点から、開催しないことになりました。開催を楽しみにされていた皆様、大変申し訳ございません。
ウェブを利用したリモート開催についても検討しましたが、細かいノウハウをお伝えするのが難しいとのことで、同じく開催を見合わせました。
今後、動画掲載等可能な範囲で、引き続き検討して参ります。(2020年8月3日掲載)