2024年9月21日(土)に開催した、「とことん科学‼ 一般向け体験セミナー」に寄せられた質問にお答えします。
Q.
今、高校で細胞実験を行っています。タンパク質ではないのですが、かんきつ類に含まれるリモネンという成分が皮膚にどう影響するか調べています。リモネンはどうすれば簡易的に取り出せますか?リモネンを使って研究したことはありますか? |
A.
細胞の中には様々な分子が混在しているので、その中からリモネンのみを抽出するためには、
リモネンとその他の分子の性質の差を上手く利用する必要があります。
したがって、「簡易的」といっても限界はあると思います。
一般的にリモネンの抽出に使用されている方法は、「水蒸気蒸留」のようですね。
リモネンは、沸点は176℃と高いですが、水に不溶なので、適切な抽出法だと思います。
ただ、この方法で得られる分子はリモネンだけではないはずです。
抽出したリモネンを何に使用するかによって、どれくらいの純度のリモネンが必要か変わってきます。
皮膚に対する影響を調べるということなので、純度はできるだけ高い方が良いでしょう。
(リモネンに不純物が含まれていると、影響があったとしてもリモネンによるものかどうか判断できなくなります)
純度の高いリモネンを得るためには、さらなる精製が必要だと思います。
なお、私はリモネンを使って研究したことはありませんが、類似の有機小分子は実験で日常的に使用します。
いずれにしても、文献を調べたり、化学構造式をよく見たりして、その分子の性質をよく理解することが重要ですね。
(小川先生)
Q.
なぜ小麦で研究をしたのですか?小麦以外で翻訳装置はできないのですか? |
A.
種々の細胞分裂やら生物材料を用いた無細胞タンパク質合成法が開発されていたのですが、それらは全てタンパク質合成の効率が低く、タンパク質を調製できるほどの量が得られませんでした。なぜ合成効率が低いのか、小麦種子を材料に原因を究明する研究を行い、その原因を突き止め、そしてその効率化の技術を確立しました。1mlの合成反応液当たり最大で10mgのタンパク質を合成できるようになり、その量は改良前の約7000倍にもなります。小麦種子研究で得た知見を他の種子材料(種子の中には発芽に備えてリボソームなどのタンパク質合成因子が詰まっている)に活用して、現在は米やとうもろこし等からも性能の高い無細胞タンパク質合成法が開発されています。食品材料を使うのは、研究過程や合成したタンパク質のヒトに対する毒性(バイオハザード)を最小限にするためです。
(遠藤先生)
Q.
猿が人間に進化する細胞に変化はあったのか知りたいです。 |
A.
サルが人間に進化したことは一度もなく、進化する前(今から500万年くらい前です)の猿と我々の先祖が同じだったということです。
(遠藤先生)
Q.
けがをしてカサブタができた時ははがすと後で皮膚に傷痕が残るのはなぜですか?タンパク質が関係するのでしょうか? |
A.
傷口に細菌感染などが生じて、複雑な事が起こって跡が残るのでしょう。感染が起こらなかったり、抗菌剤の塗布で跡が残らなかったりするのは、そんな複雑なことが起きていると考えられます。
いずれにしても、全ての場合にタンパク質分子が関わっているのは間違いないでしょう。
(遠藤先生)
Q.
この前読んだ本の中にプラナリアと呼ばれる生物がもつ「かん細胞」という他の細胞の代わりができる細胞を人間に適用させる試みがあると聞いたのですが、他の細胞の代わりをする際にもタンパク質が関係しているのでしょうか。また、どのように人間に適用させるのですか? |
A.
京都大学の山中先生のノーベル賞をもらった研究は、人工的に「かん細胞」を作る方法とそれから種々の細胞への分化(発達)の研究成果に対するものでした。勿論生物の変化にはタンパク質が中心的な機能を担っています。
(遠藤先生)