事前学習の勧め
2022年10月13日PIM2022一般向け体験セミナー 「とことん科学‼」を受講される皆様に、担当する小川先生からメッセージです。
このホームページに掲載しているものと同じ内容ですが、読みやすいようにまとめてみました。
是非セミナー前に、予習をしてください。
参考になる動画のURLも貼り付けておきます。
【参考動画】
★JST サイエンスチャンネル 「驚異の小空間「細胞」 ~大きく発展をとげた生命科学の10年~」 |
★Wellcome Genome Campus(イギリス・英語) 「From DNA to protein – 3D」 |
★DNA Learning Center(アメリカ・英語)「mRNA Translation (Advanced)」 |
3種類の方法で、小川先生のメッセージを掲載しています。全て同じ内容です。閲覧しやすいもので、ご覧ください。
【小川先生からのメッセージ テキスト版】
みなさんはタンパク質が “どのようなもの” か、知っていますか︖
⼩学校の家庭科の授業では、タンパク質が「三⼤栄養素の⼀つ」であることを習ったと思います。
お⾁やお⿂が該当しますね。中学2年⽣以上であれば、タンパク質が「アミノ酸が連結したもの」であることも知っているでしょう。
⾷べたタンパク質は、体の中で様々な消化酵素によってアミノ酸にまで分解されます。
⼀⽅、我々の体も(⽔を除けば)タンパク質を主成分として構築されています。
⽪膚、筋⾁、髪、⽖などの主成分はタンパク質だし、体の中で起こる反応を促進する酵素はタンパク質そのものです。
つまり、タンパク質の機能は多岐に渡っているわけですが、もちろん1種類のタンパク質が全ての機能を担っているわけではありません。
各機能に特化したタンパク質が存在していて、我々ヒトは数万〜⼗数万種類ものタンパク質を持っています。
では、タンパク質の機能(種類)は何によって決まるのでしょうか︖
前述の通り、タンパク質は「アミノ酸が連結したもの」ですが、タンパク質を構成するアミノ酸の種類は 20 種類に限定されていて、それらが連結する順番(配列)によってタンパク質の機能が決定されます。
タンパク質の分⼦構造はわかったものの、数万〜⼗数万種類ものタンパク質はどこからやってくるのでしょうか︖
⾷べたタンパク質は、前述の通り、アミノ酸にまで分解されてしまいます。実は、我々⽣物は、体内で(アミノ酸を部品として)タンパク質を合成できるのです。
では、数万〜⼗数万種類ものタンパク質をどのように作り分けているのでしょう︖
⾔い換えれば、アミノ酸の順番(配列)をどのように決定しているのでしょう︖
アミノ酸はランダムに連結されるわけではありません。
アミノ酸の配列を指定する設計図が存在するわけです。
「遺伝⼦(≒DNA)」ですね。ただ、DNA は“間接的に”アミノ酸をして指定しているに過ぎません。
“直接的に”アミノ酸を指定しているのは mRNA(メッセンジャーRNA)と呼ばれる RNA で、DNA の設計図(アミノ酸配列情報)をコピー(転写)したものです。
つまり、「DNA」→「mRNA」→「タンパク質」の順にアミノ酸配列情報(遺伝情報)が流れるわけです。
この流れの向きが⼀⽅向であることを『セントラルドグマ(中⼼命題)』と呼びます。
ここで、⽮印が「情報の流れ」を⽰していることに注意してください。
「変換」を意味するものではありません。mRNA の情報をもとにタンパク質が合成(翻訳)されるのです。
当⽇体験してもらう実験は、まさに「mRNA」→「タンパク質」という翻訳反応です。
この反応を試験管(チューブ)内で⾏うことに注⽬してください。
⽣体内の反応は全て化学反応なので、試験管内で再現可能なのです。
「⽣きていること」は必須ではありません。
mRNA(設計図)とアミノ酸 20種(部品)および『良質な翻訳装置(合成機)を含む⼩⻨胚芽抽出液(愛媛⼤学が開発)』があればタンパク質を合成できます。
愛媛⼤学が開発した『世界に誇るタンパク質合成技術』を体験してください。
また、試験管内で実際に起こっているタンパク質合成の機構を理解してもらうために、⾼校⽣物レベルのやや難しい講義を“⼤学の授業⾵”に⾏う予定です。
その雰囲気もぜひ楽しんでください。
ただ、「理解してこその楽しさ」があります。
そのためにも、当⽇までに、インターネット等で(転写と)タンパク質合成の機構について予習しておくことを強く勧めます。